2012年10月7日日曜日

軟弱地盤に3800万人_関東、大阪、濃尾、福岡_東海・濃尾平野・液状化の被害も全国で最悪クラス・西に行くほど軟らかい地盤の層が深く、地震の揺れも西側ほど大きくなる。

●朝日新聞10月7日(日)
軟弱地盤に3800万人居住 防災科研、分析結果発表へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121006-00000036-asahi-soci
 日本の人口の3割にあたる約3800万人が、地震で揺れやすい軟弱な地盤の上に住んでいることが分かった。軟弱な地盤は首都圏や大阪圏を中心に都市部で広がっており、巨大地震に見舞われると甚大な被害が生じる可能性がある。分析した独立行政法人の防災科学技術研究所(防災科研)が11月、東京で開かれる日本地震工学会で発表する。
 地盤が軟らかいと地震による揺れが増幅しやすく、地中の水が噴き出したり家が傾いたりする液状化現象が起きることもある。防災科研の研究グループは、地震波の伝わり方などで調べた地盤の固さと国勢調査に基づく人口分布を重ね合わせて算出した。
 地震による揺れやすさは表層地盤増幅率で示され、1.6以上になると地盤が弱いことを指す。防災科研の分析では、2.0以上(特に揺れやすい)の地域に約2200万人、2.0未満~1.6以上(揺れやすい)の地域に約1700万人が暮らしていることが判明。1.6未満~1.4以上(場所によっては揺れやすい)の地域では約2200万人が住んでいた。
 1.4以上の地域は国土面積の9%、1.6以上は6%にすぎない一方、軟弱な地盤は関東や大阪、濃尾、福岡など人口密度が高い平野部に広がる。大都市の住宅密集地並みの過密地域(1キロ四方に1万5千人以上)の場合、住民の半数以上が軟弱な地盤で生活していることになるという。
 研究グループは、海溝型と活断層型の地震の発生確率に地盤の揺れやすさを加味した地震動予測地図も活用。全人口の4割強にあたる5300万人が「30年以内に26%以上の確率で震度6弱以上の揺れに襲われる地域」に住んでいると判明した。発生確率を「3%以上」とした場合、全人口の8割にあたる約1億人が6弱以上の揺れに見舞われることが分かった。
 防災科研の藤原広行・社会防災システム研究領域長は「表層地盤増幅率が1.4程度の地域でも、平野であれば深部の地盤が軟らかい可能性があり、大きな揺れになるケースも考えられる。専門機関のハザードマップなどで住む場所の地盤を確認してほしい」と指摘している。(編集委員・黒沢大陸)
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 〈表層地盤増幅率〉 地下を伝わってくる地震波が深さ30メートルの地盤で何倍に拡大するかを示した数値。地震の揺れの大きさは、地震の規模▽震源からの距離▽地盤の強さ――に左右される。増幅率の数値が高いほど、揺れやすい軟弱な地盤といえる。


●朝日新聞 2012年10月7日
軟弱な濃尾平野、表層で揺れ増幅 東海http://www.asahi.com/national/update/1006/NGY201210050044.html
 東海地方の発達の中心となってきた濃尾平野は、全国でも有数の広さがある。しかし、地盤は軟弱で、地震によって大きな被害に見舞われる危険をはらむ。南海トラフ巨大地震の被害想定では、揺れに加え、液状化の被害も全国で最悪クラスとされた。
 濃尾平野は、地下の硬い岩の層が、三重県の養老山地に向かって西へ行くほど深く沈み込んでおり、その上に軟らかい粘土や砂でできた沖積層と呼ばれる地層が堆積(たいせき)している。
 表層の地盤が軟弱なこうした場所では、地震を起こす波が地下で重なり合うため、揺れが強くなったり、長く続いたりする。濃尾平野は西に行くほど軟らかい地盤の層が深くなるため、地震の揺れも西側ほど大きくなる。
 内閣府が出した「表層地盤の揺れやすさ全国マップ」では、名古屋市を含む愛知県西部や三重県桑名市、岐阜市、岐阜県大垣市など濃尾平野一帯が揺れやすいとされている。
 国の有識者会議が8月末に公表した南海トラフ巨大地震の被害想定では、震源域に近い沿岸部に加え、地盤の弱いこうした地域でも震度6強や7の揺れが生じると算出された。
 濃尾平野では、過去にも地震で大きな被害が出た。1891年の濃尾地震では、愛知県で約2600人、岐阜県で約5千人が死亡した。
 都市部では現在、人口の密集や建物の高層化が進んでおり、被害は当時とは比較にならないほど大きくなるとみられる。濃尾地震が再び発生した場合の愛知県の被害想定は、死者が9600人に及ぶと予測している。
 岐阜工業高等専門学校の吉村優治教授(地盤工学)は「家屋の部分的な耐震化など、比較的安い金額でできる防災対策もある。住民それぞれが、最悪の事態を想定して備える必要がある」と訴える。
■液状化、内陸部含め広範囲で
 液状化の危険も大きい。南海トラフ巨大地震の被害想定で、愛知県は液状化による全壊棟数が約2万3千棟に上り、全国で最悪だった。三重県の伊勢湾岸や静岡県の遠州灘沿いなど地盤が軟弱な沿岸部も被害が予想される。静岡県の浜名湖周辺には湖面を埋め立てた人工地盤が広く存在し、かつて湖底だった場所は地盤も軟らかい。
 また、液状化は沿岸部に限った問題ではない。内陸の岐阜県では、揺れによる全壊とほぼ同数の被害が液状化によって出るとみられている。
 液状化は、地震による水圧の上昇で地盤が一時的に液体化する現象で、地下の水位が被害を左右する。
 吉村教授によると、濃尾平野は木曽川、長良川、揖斐川の木曽三川の流域に広がっており、地下ではそれぞれの川の伏流水がつながっている。そのため地下水位が高く、広い範囲で被害が出やすいという。過去の地震でもたびたび液状化しており、かつて被害のあった場所で再び液状化が起きる可能性が高い。
 しかし、対策は進んでいないのが実情だ。
 公共施設や大型施設は建築基準法で対策が義務づけられているが、戸建て住宅には法規制がない。東海4県はいずれも液状化の危険度を示す地図をつくり、ホームページなどで公表しているが、対策そのものは個人の負担。既存の住宅に対策を講じる場合は数百万円の費用がかかるため、取り組みは広まりにくい。
 また、被害は建物にとどまらず、ライフラインや道路、堤防にも及ぶ可能性がある。
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●愛知県防災学習システム防災マップ
http://www.quake-learning.pref.aichi.jp/upload_source/bousaimap1.html
●三重県地域防災計画被害想定調査結果
http://www.bosaimie.jp/mh800.html
●岐阜県東海地震等被害対応シナリオ 作成業務報告書
http://www.pref.gifu.lg.jp/bosai-bohan/bosai/shizensaigai/shinsai/sinario.data/hokokusho.pdf
●静岡県防災GIS情報閲覧ページ
http://www.e-quakes.pref.shizuoka.jp/shiraberu/map/maps.html