2012年8月23日木曜日

除染_放射性物質を可視化する「超広角コンプトンカメラ」_宇宙望遠鏡用のガンマ線カメラ_宇宙航空研究開発機構(JAXA)強みだ

●web R25 2012.08.22
消臭、除染…宇宙発の身近な技術
http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/wxr_detail/?id=20120822-00025538-r25
宇宙船には大気圏を突破するために約1500℃もの熱に耐えられる素材が使われていたり、人工衛星には1000万光年先にある銀河さえ撮影できるカメラが搭載されていたりと、宇宙開発にまつわる技術は、僕らの身のまわりにあるそれとはスケールがまるで違う。
そんな最先端のテクノロジーが、実は意外に身近なところで役立てられているのをご存じだろうか。有名な例として、NASAが開発した「テンピュール」がある。これは、ロケットの打ち上げや帰還時、宇宙飛行士の身体にかかる衝撃を軽減させるために開発された低反発の素材が、枕やマットレスに転用されて普及した例だ。
このような例はまだまだ他にもあるのではないか? 宇宙技術を利用した商品開発を推進するJAXA産業連携センターの渡戸 満さんに話をうかがった。
「身近なところでは、宇宙における消臭技術を利用した下着やシャツが挙げられます。水が貴重で洗濯できない宇宙ステーションの中で飛行士たちが快適に暮らせるように開発された、加齢臭やアンモニア臭を大幅にカットする素材が生かされた商品ですね。また、缶チューハイでおなじみの『ダイヤカット缶』も、宇宙技術を応用した一例です。缶を開けるとプシュッという音がして、表面に三角形が連なる不思議な模様が浮き出てきますが、あれはロケットの機体を研究する過程で発見された強度の高い構造体です。これを応用することにより、缶の製造コストが抑えられています」
ニオイを抑えるシャツや、省資源で製造できる飲料缶…。宇宙の技術に、実は我々ビジネスマンもお世話になっていたのだ。さらに、JAXA宇宙科学広報・普及主幹の阪本成一さんによれば、最先端のテクノロジーが思いも寄らないところで役立っているという。

放射性物質を可視化する「超広角コンプトンカメラ」による画像。道路脇にある溝に放射性物質がたまっていることがわかる。ガイガーカウンターよりも効率的に測定できることが強みだ

「福島第一原発の事故後、飛散した放射性物質を測定する必要が出てきました。そこで注目されたのが、天体から届く微弱なガンマ線を観測するために開発されていた宇宙望遠鏡用のガンマ線カメラです。目に見えないセシウムなどの放射性物質を短時間に広範囲にわたって映し出せることから、これを地上用に応用したものが今後の除染作業に利用されようとしています」
かつては一般人の暮らしとはほど遠かった宇宙開発技術も、今や我々の暮らしを豊かにするために“利用する”時代になっているという。宇宙とともに生きるなんて、ちょっとロマンチックでいいかも。
(清田隆之/BLOCKBUSTER)