2012年3月29日木曜日

セシウム_魚_茨城県_茨城基準が他県まで広がったら商売になりません_安全で安心な魚を消費者に届けるのが漁師の使命

4月1日から適用される魚の暫定基準値は
1キロあたり100ベクレル。
茨城県の基準は50ベクレル。

■2012年3月29日配信(週刊朝日2012年4月6日号)
食品に含まれる放射性セシウム問題 近隣県が懸念する「茨城基準」拡大の影響
食品に含まれる放射性セシウムの新基準値が、4月1日から適用される。食品が「一般食品」「牛乳」「乳児用食品」「飲料水」の四つに区分された。
穀類や肉、魚、野菜などの「一般食品」は、暫定基準値の1キロあたり500ベクレルから100ベクレル、「牛乳」は200ベクレルから50ベクレル、「乳児用食品」は50ベクレルへと厳格化された。消費量が多い「飲料水」は200ベクレルから10ベクレルと、もっとも厳しくなった。
原発事故後、淡水魚を含む38種類の魚介類から100ベクレル超のセシウムが検出されている。セシウムが海底土に蓄積されたためか、アイナメやカレイ、ソイ、マダラといった底魚の汚染が目立つが、食物連鎖の上位に立つスズキやブリなど中層を泳ぐ大型魚でも出ている。
そうした状況を受け、茨城県と茨城沿海地区漁業協同組合連合会は3月下旬から、茨城県沖を三つの水域に分け、50ベクレル超の魚介類が採取された水域からの出荷を自粛するという独自基準を設定した。水域ごとに1カ月間、3カ所以上で検査し、50ベクレル以下なら解除するが、「一度、基準値を超えると、約1カ月は出荷ができなくなる」(同漁連の担当者)という厳しい措置だ。
他県の漁業関係者が懸念するのは、この「茨城基準」が拡大することだ。茨城県と利根川を挟んだ千葉県銚子市の漁業関係者は、不満を隠さない。銚子沖では、昨年9月にマアジ1検体が50ベクレルを超えた。
「茨城のマアジは何度も50ベクレルを超えていて、いつ出荷自粛になってもおかしくない。そうなると、隣り合った水域なのに、茨城は自粛で銚子はOKとなる。そんな筋の通らない話を、消費者が許すはずがない。今後、消費者からの要求で『茨城基準』が他県まで広がったら、商売になりません。50ベクレル超の魚が見つかっている宮城や岩手も大打撃を受けますよ」

『茨城基準』が他県まで広がったら、商売になりません。


■2012年3月28日配信 産経新聞
漁師「やりきれない」 「50ベクレル超」新基準、戸惑いの声 茨城
原発事故に伴う放射能汚染問題で、27日始まった新たな基準での県内海域の魚介類の出荷・販売の自粛。県の今月の検査では、国の新基準(放射性セシウム1キロ当たり100ベクレル超)と、より厳しい独自基準(同50ベクレル超)で合わせて15種類が新たに出荷・販売の自粛対象となった。県や県内主要漁協による「茨城沿海地区漁業協同組合連合会」は魚介類の「安心・安全」をアピールする狙いがあるが、現場の漁師や市場からは戸惑いの声も聞こえてくる。
「きょうはマダラがたくさん獲れたけど、海に戻した。悔しいよ」。那珂湊漁港(ひたちなか市)を拠点に同市沖で漁業を営む「山崎丸」船長、山崎明さん(46)は唇をかむ。27日の出漁はヤリイカ、カレイなどの釣果があったが、船には出荷自粛対象魚種の一覧表。「やりきれないな」とため息が出る。
同漁港内の那珂湊おさかな市場は、春休みで家族連れなどでにぎわう。ただ、店頭には地場産の魚介類の仕入れが減り、県外、海外産が目立つ状況だ。森田水産の永山靖・本店長は、「仕入れは昨年夏に一時回復したが、今年に入って100ベクレルの基準値の話が出てから那珂湊の魚が揚がってこなくなった。売る方としては品ぞろえが減り、つらい」。
県漁政課によると、今月実施した検査で、国の新基準に当たる同100ベクレル超は8種あり、県内全域の海域で自粛。また、県独自の基準として始めた同50ベクレル超は県北部4種、県央部2種、県南部2種で、それぞれ水揚げを自粛する。ホウボウは県北部、県南部で50ベクレルを超えた。県や漁協側は、あえて厳しい基準を設けることで魚介類の「安心・安全」をアピールする狙いがある。今後の検査で対象魚種が増える可能性も。自粛解除には今後の検査で3回連続基準を下回る必要がある。
県や沿海漁連側は「安全で安心な魚を消費者に届けるのが漁師の使命。汚れた魚は決して出しません」(小野勲・同漁連会長)と背水の陣を敷く。
あえて厳しい基準を設けることで
魚介類の「安心・安全」をアピールする。
安全で安心な魚を消費者に届けるのが漁師の使命。