家庭用発電所が実現? 太陽光で水素を発生する「人工葉」
4リットル弱の水から、開発途上国の家1軒の1日分に相当する電力を作り出すことができるという、光合成を模倣した「人工葉」を作ったとMITの教授が主張している。インドの巨大複合企業Tata Groupと提携して、冷蔵庫ほどの大きさの小型発電所を製造する計画だ。
http://wired.jp/wv/2011/03/29/%E5%AE%B6%E5%BA%AD%E7%94%A8%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%E3%81%8C%E5%AE%9F%E7%8F%BE%EF%BC%9F-%E5%A4%AA%E9%99%BD%E5%85%89%E3%81%A7%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E3%82%92%E7%99%BA%E7%94%9F%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%8C/
カリフォルニア州で開かれた全米化学学会の国内会議で、マサチューセッツ工科大学(MIT)のDaniel Nocera教授が、自然の光合成プロセスを模倣する「人工葉」を、安定性が高く安価な材料から作ったと主張している。
この装置は高度な太陽電池で、一般的なトランプほどの大きさしかなく、水の上に浮かべた状態だ。自然の葉と同様に、日光を利用して水を酸素と水素という2つの主要構成要素に分解し、これらを貯めておき、燃料電池で発電する際に利用する。
Nocera教授の作った葉は安定性が高い。予備試験では、機能低下なしに45時間以上連続して動作した。さらに、シリコン、電子部品、化学触媒といった、入手しやすく安価な材料でできている。しかも強力で、光合成を行なう効率は自然の葉と比べて10倍も高い。
Nocera教授によると、4リットル弱の水で、開発途上国の家1軒に、まる一日供給するだけの電力を作ることができる可能性があるという。地球上のあらゆる家に人工葉を1枚ずつ配れば、[1軒あたり]1日4リットル弱の水だけで14テラワットの需要を満足させることができるかもしれない[2005年の日本語版過去記事によると、米エネルギー省は2002年の世界の総電力需要量を約14テラワットと算出している]。
感動的な主張だが、これは絵に書いた餅のような概念だけの考えではない。Nocera教授はこの革新的なアイディアを商用化するために、すでに世界的な大企業と契約を結んでいるのだ。インドの巨大複合企業であるTata Groupは、Nocera教授と提携し、1年半後を目安に、冷蔵庫ほどの大きさの小型発電所を製造することにしている。
もちろん、これがこれまでで初めての人工葉というわけではない。自然がエネルギーを作り出すプロセスを模倣しようという構想は、数十年にわたって存在し、多くの科学者たちが葉を作ろうと試みてきた。第1号は、10年以上も前に米国立リニューアブル・エネルギー研究所のJohn Turner氏が作ったもので、光合成を模倣することはできたが、稀少で非常に高価な材料でできていた。さらにかなり不安定で、寿命もかろうじて1日もつ程度だった。
これまでのところ、Nocera教授の目は開発途上国に向けられている。「われわれの目標は、各家庭が自分の発電所を持つようにすることだ」と教授は述べる。「今からさほど遠くない将来に、インドやアフリカの村々が、この技術に基づく手頃な価格でシンプルな発電所を購入するようになることを期待してほしい」
水を酸素と水素に分解する。
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発生した酸素と水素は燃料電池で利用。
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発生した酸素と水素は燃料電池で利用。
■2011年10月1日 TechCrunch
シリコン半導体が’光合成’を行う’人工葉’をMITが開発http://jp.techcrunch.com/archives/20110930more-details-on-mits-artificial-leaf-and-video/
MITの画期的な発明、“人工葉(artificial leaf)”の話を聞いたのは、今年の3月だ。それは、太陽光だけから、酸素と水素を作り出す。昨日(米国時間9/29)出たScienceに記事が載ったが、研究チームはその装置の動作を示すビデオもリリースしている。
装置と書いたけど、むしろそれは素材だ。可動部分がないし、特定の形状やサイズもない。その’葉’は半導体のシリコンで、表(おもて)面にコバルト製の特殊な触媒が塗ってある。2008年にDaniel Noceraのプロジェクトで発明され、裏面はニッケル/モリブデン/亜鉛の合金だ。太陽光がシリコン内に電流を作り出し、触媒が水の分子をH2とO2の気体に分解する。その気体は、’葉’の裏面から泡になって出る。
■April 21, 2012 National Geographic News
発電する葉、自然に学ぶエネルギー
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=2012042004&expand#title
植物には、エネルギーを貯蔵可能な形に変換する素晴らしい能力が備わっている。太陽光で水を糖質に変換する生化学反応プロセス「光合成」だ。この基本プロセスを実験室で模倣することはできないか。世界中の研究者が懸命に模索している。
例えば、アメリカにあるマサチューセッツ工科大学(MIT)のダニエル・ノセラ(Daniel Nocera)氏は、「人工の葉」を開発した。実際の葉と比べても薄さ・小ささは遜色がなく、人工光合成を実現する一歩として期待されている。
コバルトの触媒と特殊合金に挟まれたシリコン太陽電池が、水を酸素と水素に分解する。発生した酸素と水素は燃料電池で利用できるという。従来の人工葉とは異なり、通常の水で機能する。配線や外部装置を一切必要とせず、軽量で持ち運びが可能だ。
燃料電池の中に送り込まれた酸素と水素は化合して、水に戻る。このプロセスによって電流が発生。酸素と水素を回収して貯蔵するシンプルなシステムが開発されれば、どこでもエネルギーを生み出すことが可能になる。近い将来、“パーソナル発電機”が誕生するかもしれない。
従来の人工葉とは異なり、通常の水で機能する。
配線や外部装置を一切必要とせず、
軽量で持ち運びが可能だ。
■Sun Catalytix
http://www.suncatalytix.com/