モミジはまだ先端だけが色づきはじめたばかり
ツバキやクスノキ、ヒノキたちは相変わらず北の空を 光を 風を 遮断している
南の生垣のサザンカは、たくさんの濃いピンクの花をつけてきた
部屋に飾った花は、一枚一枚ハートの花びらを散らしていく
西の斜面には、あちこちにサラシナショウマの白い穂が揺れる
東のミョウガの葉は、カキやサクラの落葉の中にとけていった
アザミのピンクが点在
トリカブトの蕾はまだ緑
1年前にここに来た頃の風景だ
1年間、働かなかった
昔から転職と引越を繰り返してきた
出会いと別れも
人生一回きりだから、いろいろな事をやり、いろいろなものが見たいと
その度に心身を癒し、次へと向かってきた
のだが
それで
心は癒されるのだが、肉体はそうはいかない
人が動いて、働くという字になるのも少々理解できるが
何より、金がないので働くのだ
もう何ヶ月も就活
問い合わせや履歴書の郵送を繰り返し、面接までたどりついたのは3社
9月には、かつて働いたことのない大企業への採用が決まったが、
入社の数日前に辞退した
担当者の話が、
給与、就業時間、職場環境、労働条件などが
ハローワークの情報と変わっていったから
社員からパートという選択に変更した
大学生時代のアルバイト以来となる
しかも、最低賃金で日4時間
仕事も今まで経験したことのないこと
散歩をする程度で、体力にまだ自信がなく、
社会復帰に向けて身体を慣らすことを優先した
3本のサクラはすべて葉を落とした
枝越しに雪を頂く富士山がリビングからやっと望めるようになった
明日から山を下り、ひなびた歴史ある温泉地で働く
働かないという生活は、まだまだ遠い夢