北極の海氷面積、最小記録を更新
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2012年夏、北極海の氷は歴史的なスピードで縮小している。最新の衛星データによると、2007年の記録を上回る勢いだという。主な原因は地球温暖化だ。今後の影響として、猛暑、寒波、干ばつなど、極端な天候の頻度が増加し、期間も長くなると懸念されている。
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現在の北極海の海氷(青白い部分)。オレンジ色の線は、1979~2010年に観測された最小面積の平均。 |
アメリカ国立雪氷データセンター(NSIDC)は8月27日、現在の北極海氷の減少スピードは観測史上最速と発表。8月には1日あたり平均約100平方キロが消失しており、通常の約2倍に相当するという。
総面積は410万平方キロとなり、衛星観測が開始された1979年以降で最小の数値だ。NSIDCのジュリエンヌ・ストローブ(Julienne Stroeve)氏によると、1970~80年代の夏には700万平方キロ以上あったという。
また、この記録は更新が予測されている。氷の融解シーズンはあと3週間ほど残っており、さらに縮小する可能性が高い。「最終的に400万平方キロ以下になるだろう」と同氏は予想する。
◆氷の薄さが原因か
研究チームによると、以前の最小記録(2007年9月18日の417万平方キロ)の際は、気象条件が大きな要因だったという。高気圧がこの地域に留まる異常な天候パターンが続き、晴天で日に当たる時間が伸びた結果、氷が解けやすくなった。
だが今年は様子が異なる。「変化が多い夏だった。氷が元々薄くなっており、天候はそれほど関係ない。夏に解けやすくなる条件が揃っていた」とストローブ氏は話す。
ストローブ氏のチームではコンピューターによる気候モデルを20パターン以上分析し、地球温暖化が海氷縮小に与える影響を調べた。
その結果、1979年以降に観測された縮小に対して人間の活動が原因となったのは約60%、残りが自然の気候変動だという。
「温室効果ガスの観測データを入力せずにシミュレーションを実行すると、どの場合でも氷は縮小しない。現在の状況を予測できるモデルは皆、ガスの影響が及んでいる」とストローブ氏は語る。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の気候モデルでも、地球温暖化が続く場合、数十年後の夏には北極の氷が完全に解けると予測されている。
アメリカ、ラトガース大学海洋沿岸科学研究所の気候研究者ジェニファー・フランシス(Jennifer Francis)氏は、新記録について次のようにコメントする。
「想定よりも早く、氷のない北極の夏が訪れそうだ。50年以上先と予測するモデルもあるが、私は今後30年間でいつでも起こりうると思う」。
ストローブ氏の研究は「Geophysical Research Letters」誌で8月25日に発表された。