●東京新聞 2012年7月23日
駿河湾海底 ひずみ蓄積 津波巨大化の可能性
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012072302000097.html
近い将来に予想される東海地震で、駿河湾でこれまで震源域と思われていなかったプレート境界付近で、津波を巨大化させる恐れのあるひずみが蓄積されている可能性があることを、名古屋大と東海大海洋研究所(静岡市)のグループが突き止めた。
グループは衛星利用測位システム(GPS)と音波を利用し、二〇〇四年から一〇年まで、太平洋のプレート境界・南海トラフのすぐ西側の海底の動きを調査。その結果、清水港(静岡市)の南東十キロの地点で、海底が一年に四センチの割合で西に動いていた。この動きから、境界近くの海底下五キロ以内の場所で、プレート同士がくっつき(固着)、ひずみがたまっていると判断した。
プレートとプレートが重なり合うと、地中の岩盤に大きな力が加わり、地殻にひずみが蓄積。長年のひずみが限界に達したとき、それを解放する現象として地震が起きる。これまでは、海底に近い浅い部分ではプレート同士は固着せず、ひずみは蓄積されないと考えられていた。浅い部分で蓄積されたひずみが動けば、プレートの先端までがはね返り、海水が押し上げられて津波が大きくなる。
昨年三月の東日本大震災では、プレート境界のすぐ西側が盛り上がり、津波が大きくなった。震災を受け、内閣府の有識者会議が今年三月に公表した南海トラフ地震の最大級想定では、プレート境界付近も震源域に盛り込まれた。
これまでプレート境界のすぐ西側でひずみは見つかっておらず、今回が初めての観測結果。内閣府が想定する巨大な津波が発生しうることを示す証拠となる。
グループの田所敬一・名古屋大大学院准教授は「調査をすれば、ほかの場所でも軸のひずみが見つかる可能性が高い。観測網の整備が必要だ」と話している。
<駿河トラフと東海地震> 駿河トラフは静岡・駿河湾から沖合に向かって延びる海底の盆地状の地形。陸側プレート(岩板)の下にフィリピン海プレートが沈み込む境界部分と考えられる。東海沖から四国沖にかけての南海トラフの北東端に当たる。東海地震は主に駿河トラフ沿いで、東南海地震はその西側で起きるとされる。東南海地震が1944年に発生しているのに対し、東海地震は連動して起こった1854年が最後で、他の地震より切迫性が高いとされる根拠の一つになっている。